内部監査の話(現地監査の重要性について)

はじめに

私が初めて関わった内部監査、特に現地調査を通じて、個人としても、また組織としても色々な気づきを得たことや、有効な内部監査を実施する要件、監査員に要求される能力について述べたいと思います。

ミスが連続して発生した

私は当時「業務ミス防止(品質保証)」を所掌していましたが、あるエリアの支店で給与業務に関するミスが連続して発生しました。

実施者の認識不足、確認不足が原因との報告があり、その他の状況を確認すると、現場組織では業務マニュアルは現行化されたものが配備されていましたし、勤続年数の浅い社員には先輩社員がカバーする支援体制も構築されているようでした。

また、他の組織と比較しても業務が月末などに集中する度合いが高いわけではなく、稼働がひっ迫する状況もありませんでした。

それでも、連続してミスが発生しているので、当該組織特有の問題があり、経営に影響を与えるような課題であるかもしれないということから、オンサイトでの監査を実施することになりました。

オンサイトでの監査でわかったこと

訪問してみると、職場の雰囲気や環境に問題は無さそうでしたが、一方、現場のマネジャーや担当者にヒヤリングを実施したところ、配備されていたマニュアルに問題があることが分かりました。

当時の勤務先企業グループでは、組織の改編が繰り返し行われていましたが、当該エリアでは関係する会社が他のエリアと比較して多く、雇用形態、給与体系も複雑なものになっていました。

一見すると丁寧に作成されていたマニュアルですが、この組織改編の経緯などの記載が無かったため、一部のオペレーションを実施する際に、その経緯を知らない社員がオペレーションミスを引き起こす可能性があることが分かりました。

しかも、今後、他のエリアでも社員の新陳代謝が進むことから、全社的に同様なオペレーションミスが発生するリスクが高まることも分かりました。

現地調査を実施して、スキル継承、業務品質維持向上という経営に影響を与える問題が発生していることについて、報告された書類を見ただけでは把握できていないことに気づきました。

現地に行くこと、現物に触れることの大切さを忘れてはいけないと、改めて気づかされました。

リモートワークがスタンダードになっている昨今ですが、上手く適応する方法を見つけていきたいと思います。

最後に

内部監査が有効に実施されるためには以下の要件が重要になると言われています。

1.経営層の関与
2.被監査部門の協力
3.組織、目的に適合した監査方法
4.監査員の能力

また、「プロフェッショナルマップ」というフレームワークでは、監査員は以下の能力を身につけることを求めています。

1.組織や市場を理解して戦略を策定できる
2.組織内のルールに準拠した行動ができる
3.製品やサービスの満足基準を保証できる
4.継続的にプロセスやパフォーマンスを改善できる
5.リーダーシップを持って組織をけん引できる

それぞれの能力について、どこまで、いつまでに習得するのか、不足する部分をどのように補完するかについて明確化する、そして実行する。このようなアクションが必要であると思います。